「思い出の万年筆とジュリアという名前のバラ」

キャンバスに油彩 4号

私が中学生の頃、男の子たちにはモンブランの万年筆が人気でした。星のマークが目印です。神戸の街には輸入品を免税でうる、みっちゃんという間口の小さなお店があり、いつもお客で混み合っていました。さまざまな輸入雑貨がところ狭しと陳列され、万年筆もありました。

Aくんは、頭がいいけどロマンチスト、星を食べた男、という物語を作ったり、ビアノを弾いたりする少年でした。クラスは違ったけど生徒会活動で一緒にお仕事をしたりして、なんとなく気になる存在。やがて卒業のとき、別の高校へ行くAくんと、彼の愛用のモンブランと、私の使っていた万年筆とを交換しました。(むねキュン!かわいいねー)

高校生になって、彼の記憶も薄れていきました。彼には彼のガールフレンド、私には私のボーイフレンドがいて、ばったりカップルで出会ったりしたね。

高校を卒業して、彼は京都大学に行って、私は、それは偶然なんだけど、やはり京都の学校へ行き、偶然下宿が近くて、何度か遊びましたが、私が一年で学校をやめて東京へ引っ越したので、それきり音信不通。それがなんと、九年後のある日、阪神電車の三宮駅でばったり会ったんです!懐かしくて、居酒屋さんでお酒を飲みました。彼は大学院を出てフランスの石油会社に就職し、もう結婚をしていて、赤ちゃんも産まれていました。楽しいお酒でした。インドネシアの住所のメモをもらったけど、クリスマスカードを出すこともなく。それ以来、会っていません。

その後、彼に会ったことはありません。その石油会社の日本支社長になって活躍されていたようです。

私がまたこの古びた万年筆を持っていて、絵のモチーフにしてたりするって知ったら、Aくんは驚くかな。

ちょっぴり甘酸っぱい思い出の万年筆です。

モンブランというのが、美しい山の名前だと知ったのは、ずっとあとのことでした。白い山、モンブラン。

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